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解離性障害のカウンセリングと治療

どれが私?どれも私?

解離性障害(Dissociative Disorder)とは、記憶や思考、自分が自分であるという自我同一性などの連続性が失われる解離症状を中心とし、日常生活に大きな影響を与える障害です。

本記事では、解離性障害の原因、種類、診断、疫学、特徴、経過、予後、治療、カウンセリングなどについて解説していきます。

1.解離性障害とは

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解離性障害とは、心的外傷や過去の辛い経験が原因で、自分自身や周囲の現実を感じる能力が一時的に失われる状態です。自分の身体や感覚が自分のものでなくなることがあったり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。これは、過去のトラウマが現在に影響を与えていることが原因で、心が自己防衛のために過去の出来事から自分自身を分離しているためです。治療には、心理療法や薬物療法が使われることがあります。

解離は日常生活に多大な支障をきたします。解離とは、記憶や思考、自分が自分であるという自我同一性が本来は統合されているものの、突然その連続性が失われてしまう状態を指します

解離性障害は過去には多重人格とも呼ばれており、現在DSM-5(精神疾患の診断と統計のマニュアル 第5版)では解離症群とも呼ばれ、大きく3つの下位分類が存在します。

解離性障害は強いストレスや心的外傷のために記憶の空白が生じる障害ですが、自我同一性の破綻の他にも身体が固く感じ動かなくなる症状も見られる場合があります。意識があるにも関わらず、声を発することができなくなる症状や、てんかんのようにけいれんを引き起こす特徴もあります。また、意識を保つためや意識を保てない不安や恐怖のために自傷行為をしてしまう危険も考えられる病気です

下位分類でみていくと、解離性障害の場合は記憶の空白に本人が気づかず、障害をもっている認識が欠如しやすい特徴があります。解離性健忘では、自身の生活史や個人情報を思い出せない場合でも、物の使い方など生活上での知識は保持されていることが多いです。

また、解離性遁走の症状が見られる場合は、新たな自我同一性を獲得してしまうといわゆる「蒸発」状態となり、現実とは全く異なる名前や場所、性格で生活してしまうことがあります。

離人症・現実感消失障害では、離人体験をしていても本人の現実検討力は保たれているため、不安や恐怖が悪化し二次障害の可能性が高まることが特徴的です。

2.解離性障害の原因

泣いている二人の子ども解離性障害の原因として、強いストレスや心的外傷体験(トラウマ)が関係していると考えられています。ストレス耐性は個人により異なるため、同一のストレスや心的外傷を受けたからといって解離性障害になるとは限りません。

具体的な要因としては、幼少期からの虐待やネグレクト、学校や職場でのいじめなど日常的な負荷の強さによる発症や、事故現場の目撃、自身の命に関わる出来事の体験などによる突発的な発症が挙げられます

原因は心因性のみとは言い切れず、いくつかの要因が重なり発症すると言われています。

3.解離性障害の種類と診断基準

虫眼鏡を覗く子ども解離性障害の診断では、解離や離人体験に関する症状の確認が重要になりますが、本人の病識がない場合も多いため、家族の協力も望ましいです。解離症状のスクリーニングにはDESという解離体験尺度を使用することもありますが、スクリーニング検査では診断に至らないため、診断の際は医師の診察を受ける必要があります。

また、脳の外傷や薬物などの物質使用による解離症状と判別するために、MRI検査や頭部CT、血液検査などを行う場合も多いです。精神疾患に関する鑑別疾患には、認知症やPTSD、急性ストレス障害などが挙げられ、発達障害の合併がある場合もあります。

そして、解離性障害には、解離性同一性障害、解離性健忘、離人症・現実感消失障害の3つの下位分類と、その他特定不能の解離性障害に分けることができます。

(1)解離性同一性障害

解離性同一性障害(解離性同一症、DID、Dissociative Identity Disorder)とは、1人の人間に複数の分離した人格が存在し、それら複数の人格が異なるときに出現することで本人の感情や行動、記憶などを支配してしまう病気です。多重人格と呼ばれることもある障害であり、人格間で記憶の共有はされず記憶の空白も見られます。

DSM-5によると、以下のような診断基準があります。

解離性同一性障害の診断基準

  1. 2つまたはそれ以上の、他とはっきりと区別されるパーソナリティによって特徴づけられた同一性の破綻であり、文化によっては憑依と言われるものである。同一性の破綻は本人の報告や他者からの観察で見られる
  2. 日常生活や重篤な個人情報、心的外傷体験を思い出す際に記憶の空白が繰り返され、通常の物忘れでは説明できない
  3. 解離症状によって日常的に困り、機能障害が引き起こされている
  4. 解離症状は、文化や宗教などの慣習からみても正常とは言えない(子どもの場合は空想遊びなどで説明できない)
  5. 解離症状は、アルコールなどの物質や他の医学的疾患による作用ではない

出典:DSM-5

(2)解離性健忘

解離性健忘(DA、Dissociative Amnesia)とは、強いストレスや心的外傷体験により自我同一性を失い、重篤な個人情報を思い出せなくなる解離性健忘や、突然日常から離れて新たな自我同一性を獲得してしまう解離性遁走が見られる病気です。以前のDSM-Ⅳ-TRでは解離性健忘と解離性遁走が分けられていましたが、DSM-5にて統合されています。

DSM-5によると、解離性健忘には以下のような診断基準があります。

解離性健忘の診断基準

  1. 強いストレスや心的外傷の性質をもつ重篤な個人情報を思い出せず、物忘れでは説明できない。なお、解離性健忘の多くは限局的な健忘または、自身の生活史などの全般性健忘である
  2. 症状によって日常的に困り、機能障害が引き起こされている
  3. 症状は、アルコールなどの物質や他の疾患によるものではない
  4. 解離性健忘は、解離性同一性障害や心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、身体症など他の障害で説明できない

出典:DSM-5

(3)離人症・現実感消失障害

離人症・現実感消失障害(離人感・現実感消失症、Depersonalization/Derealization Disorder)とは、自分を自分の外側から眺めているように感じる「離人体験」や、自分の身体が自分のものではなくなる感覚が生じる病気です

DSM-5によると、以下のような診断基準があります。

離人症・現実感消失障害の診断基準

  1. 離人感、現実感の消失、またはその両方が持続的・反復的に生じる
    1. 離人感・・・自身の考えや感情、感覚、身体、行為などについて自分のものとは思えない感覚
    2. 現実感の消失・・・人や物がベールに包まれて見えるような、非現実的な体験
  2. 離人感や現実感の消失体験の間は、現実検討力は正常に保たれている
  3. 症状によって日常的に困り、機能障害が引き起こされている
  4. 症状は薬物やその他の疾患によるものではない
  5. 症状は、統合失調症やパニック障害、うつ病、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害など、他の精神疾患では説明できない

出典:DSM-5

4.解離性障害の特徴

肩を抱く女性解離性障害についての特徴をいくつか解説します。

(1)正常な解離と病的な解離

誰でも人はストレスフルな体験をしたとき、無意識に解離を経験することがあります。

  • 物事に集中しすぎて呼びかけられた記憶がない(没頭体験)
  • ストレスフルな体験で失神してしまう(防衛)
  • 意識はあっても夢のような体験をする(白昼夢)
  • 健康な子どもが想像上の友だちと会話する(イマジナリー・フレンド) など

このような解離症状もあるため、障害として判断しづらい人も多くいます。

正常な解離と病的な解離の違いは、解離症状の程度や長さ、慢性的に見られるかどうか、日常生活への支障の有無などで考えてみると認識しやすいと言えます。解離は一概に障害とは言い切れず、強いストレスから自我を守るための防衛という側面もあることを覚えておきましょう。

(2)疫学

解離性障害は、その症状の性質上正確な発症率や有病率の特定は難しく、発症の多くは特定不能の解離性障害とされることが多いです。

発症時期は思春期から成人期の発症が多いと考えられています。また、文化によっては憑依体験とされることもあるため、文化差も大きく見られます。

解離性障害の発症頻度は、北米では人口の2.3%という報告もあります。日本では、柴山(2012)によると、解離性障害の割合を以下のように報告していますが、症例の増加により特定は極めて困難といえるでしょう

  • 解離性同一性障害 約30%
  • 解離性健忘/遁走 約5%
  • 離人症性障害 約10%
  • その他特定不能の解離性障害 約55%

出典:柴山雅俊(2012)「解離性障害のことがよく分かる本 影の気配におびえる病」講談社・健康ライブラリーイラスト版

解離性障害の男女比については、男性よりも女性に多いとされています。

(3)経過と予後

解離性障害は、本人が感じた強い不安や心的外傷体験に関する記憶が抜け落ちてしまうことがあり、病識の認識が困難である特徴があります。そのため、解離性障害の治療を始めたとしても解離症状に気づけなかったり、否定してしまったりすることで治療の進めづらさが考えられます。

解離性障害は、子どもの場合は経過良好で一時的な解離症状となることが多く、成人期以降の発症は慢性化しやすい傾向があります。発症と同じく回復時期も突然であり、解離性障害の予後は個人の特性や障害の程度、治療者との関係、きっかけとなった出来事など、いくつかの要因によると考えられています

5.解離性障害の治療

パソコンを見ている二人の女性解離性障害の治療に有効な薬物療法はないと言われており、カウンセリングを中心に治療を進めることが多いです。また、自然治癒を目指す場合もあります。

(1)薬物療法

解離症状に有効性が確認される薬物はありませんが、強い不安や恐怖、うつ、不眠など二次障害を緩和するために薬物療法を行うこともあります。ただ、解離性障害の根本治療にはならないため、依存の可能性のあるベンゾジアゼピン系は控える方が望ましいでしょう。

心的外傷後ストレス障害に有効性が認められるSSRIや、眠剤、抗うつ剤が多いです

解離性障害に用いられやすい薬剤例

系統製品名商品名

SSRI

エスシタロプラムレクサプロ
フルボキサミンルボックス、デプロメール
パロキセチンパキシル
セルトラリンジェイゾロフト

(2)カウンセリング

解離性障害の原因として心的外傷体験(トラウマ)が大きく関係していると考えられているため、カウンセリングにて自身の体験や感情などを話し、病状理解をすることが推奨されています

解離性障害の人は、心理的にも環境的にも強い不安や恐怖を感じていることが多いため、カウンセラーと信頼関係を築くことが重要です。カウンセリングで安心感を得ることは難しいことかもしれませんが、回復には時間がかかることを知り、根気よく話し合ってみてください。人格交代のためにカウンセラーを変えるのではなく、可能であれば同じカウンセラーと関係を続ける体験を重ねてみてください。

そして、信頼関係ができた上で、トラウマに焦点を当てたカウンセリングを実施します。EMDRや自我状態療法、催眠療法などの専門的な技法が使われることが多いです。解離性同一性障害の場合には交代人格ごとに契約を結んだり、対応を変えたりすることもあります。一方で、交代人格は解離症状の一つということで、対象のクライエントを一人の人間として対応する方法もあります。どちらが優れているということはありませんが、カウンセラーの熟練度や考え方、状況、クライエントの状態などに合わせて、現場でアレンジしていくことになるでしょう。

6.(株)心理オフィスKで解離性障害のカウンセリングを受ける

タブレットを操作する女性解離性障害についての概要、原因、特徴、診断、治療などについて解説してきました。解離性障害の症状は非常に多彩ですが、トラウマが強く関与している精神障害で、トラウマ治療が効果的であることが多いようです。つまり、カウンセリングによってそれなりに改善するということです

(株)心理オフィスKでは解離性障害やトラウマについてのカウンセリングを行っています。相談やカウンセリングをご希望の方は申し込みフォームからご連絡ください。


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