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公開:2019-12-13 更新:2019-12-13

M,クライン 転移の起原(1952)

目次

  1. 要約
    1. 解題より
    2. 転移の定義
      1. フロイトの定義
      2. クラインの定義
    3. 最早期発達段階に関する持論の要約
      1. 妄想的-分裂的態勢
      2. 抑うつ的態勢
    4. フロイトとの異同
      1. 幼児期最早期段階に関する結論のいくつか
      2. 早期の同一化について
    5. 分析の要諦
  2. 解説
    1. クラインの理論
    2. 逆転移への批判
  3. PDFファイル

クラインの写真

図1 クラインの写真

M,クライン 転移の起原(1952)要約

(注)要約は2013年度の文献レジュメ「転移の起源PDF」から抜粋

1.解題より

  • クラインが転移を主題として論じた唯一の論文。その転移概念は全体状況を含む。
  • 解釈は、患者の現生活体験の無意識的要素と転移の早期対象関係の両方を扱うべき。
  • 対象関係は誕生と共に始まる。自己愛・自体愛状態は内的対象へのひきこもり状態。

2.転移の定義

(1)フロイトの定義

「分析で喚起・意識化される衝動・空想の新版・複写。一連の心理学的体験の連続が、過去に属するものとしてでなく、現在の医者に適応されるものとして再生される。」(『あるヒステリー患者の分析の断片』1905)

(2)クラインの定義

「いろんな形で一生を通して働いている、あらゆる人間関係に影響を与えるもの。」「分析手法が患者の無意識に入るにつれ、患者の過去が徐々に再生される。そこでは幼児期の体験、対象関係、情緒が分析家に焦点化され、幼児期における状況で使っていたと同じ防衛機制を使い、再び活発化された葛藤と不安に対処する。」

3.最早期発達段階に関する持論の要約

(1)妄想的-分裂的態勢(schizoid-paranoid position/1946)
  • 生後3-4カ月:被害的不安と理想化が優勢(機制=分裂・否認・全能感・理想化)
  • [不安の最初の形態]=被害的性質(死の本能→絶滅恐怖)=被害的不安の原初的動因
  • 誕生後~破壊衝動→対象⇒報復される恐怖+種々の外的苦痛体験*⇒<被害不安強化>
  • (*誕生時の体験感覚・新たな状況への適応困難・欲求不満・不快)=敵対勢力の攻撃
  • 誕生後の快適さ・配慮(授乳)=良い勢力に由来するもの⇒<身を守るため理想化>
  • →分裂過程活発化:満足・愛情=「良い乳房」vs破壊衝動・被害感情・憎悪=「悪い乳房」
  • リビドーと攻撃性とを母親の乳房へ投影し、乳房を取り入れる⇒内的対象関係の基礎
  • 乳房の取り入れが超自我形成の始まり→父親も内的世界の部分に→愛情・憎悪間、内的・外的状況間、現実知覚・空想間での揺れ動き、被害的不安・理想化間の相互作用が特徴
  • →迫害的・極悪な対象⇒(必然の結果)⇒理想化された対象
(2)抑うつ的態勢(depressive position)
  • 生後4-6ヶ月頃:徐々に成長する自我の統合・総合能力⇒感情・対象の統合が進む
  • [第二の不安]=最愛の内的・外的対象を破壊・喪失したとの罪悪感と不安
  • →エディプスコンプレックスの始まりへ:
  • 不安・罪悪感⇒投影<悪い対象を外在化>、取り入れ<良い対象を内在化>の必要
  • 願望・愛情・罪悪感・償い/憎悪・不安を其々帰するための新たな対象を探求する必要
  • 外的世界に内的像の代用物を見つけ出す必要、を増大させる。
  • →自我の統合、身体的・精神的熟練、外的世界への適応→象徴形成過程→転移が可能に

4.フロイトとの異同

(1)幼児期最早期段階に関する結論のいくつか
  • フロイトの発見の延長
  • 逸脱点=「対象関係は誕生後の最初から働いている」
  • クラインの仮説:自体愛・自己愛=内在化された良い対象への愛情・関係を含む
  • (良い対象=空想上愛される身体・自己部分を形成→引きこもり=その対象に向かう)
  • 誕生以降、第一義的には母親の乳房との関係が存在
  • ⇔フロイトの仮説:自体愛・自己愛段階は対象関係を阻んでいる・・・が相違は小さい
  • 母親の乳房との関係が自体愛・自己愛に先んじてあるとの示唆指摘
  • 「対象は母親の乳房、、、より離れ、、、自体愛的なものとなる、、、」
  • 「対象」用語の異同:フロイト「本能目標の対象」
  • クライン「これに加えて、情緒・空想・不安・防衛を含む対象関係」
(2)早期の同一化について
  • フロイト:最初の最も重要な同一化=父親との、あるいは両親との同一化と定義
  • ⇒最早期幼児期において対象と取り入れ過程とは一つの役割を演じている、との考え
  • ⇒自体愛・自己愛に関して矛盾あり、最終的結論に至らず。(異同を保留)
  • ⇔アンナ・フロイトの仮説:「数か月以上にわたるある段階が対象関係に先行する」では衝動・空想・不安・防衛は幼児にはなく、一つの対象とも関係していない、いわば真空の中で働いているということになる。(見解の相違を重視)
  • ⇔クラインの主張:
  • 「内的・外的問わず対象を含まぬいかなる本能衝動・不安状況・精神過程も存在しない。対象関係は情緒生活の中心に存在し愛情・憎悪・空想・防衛は最初から対象関係と関連。」

5.分析の要諦

  • 転移=最早期段階において、対象関係を決定づけていたと同じ過程の中で生まれる
  • 愛情・憎悪間の早期相互作用の探求、攻撃・不安・罪悪感・攻撃性の悪循環を対象の多様な側面とともに探求する→陽性・陰性転移の相互連関を認めうる
  • 陰性転移の分析こそが、心の深層の分析に必須条件~分裂病患者の分析に効果的
  • 分析者は、両親像のどの側面が再生させられているかの理解肝要=成功の鍵
  • 「結合された両親像」=羨望と嫉妬の原型
  • 転移分析は全体状況(日常生活・諸関係・活動)を考察(情緒・防衛と同様に重要)
  • 探求すべき領域:現在の状況と最早期の体験との間にあるすべてを網羅
  • ~最早期の情緒・対象関係の接近=その後の発達に照らし、変遷を調べ関連づける
  • 反復強迫=最早期不安状況にかりたてられる圧力:転移分析→早期対象関係深層修正
  • →繰り返す衝動が弱まる→被害的・抑うつ的不安の低下へ

M,クライン 転移の起原(1952)解説

1.クラインの理論

 クラインの理論に関しては「子どもにおける良心の早期発達」の解説を参照してください。

2.逆転移への批判

  • クラインの逆転移の理解はフロイトと酷似している。
  • 逆転移は治療者の病理であり、治療に役立つものではない。
  • 中立性の厳守。
  • 逆転移の活用を主張したハイマンを破門。

PDFファイル

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